ケープ・ライトのdiary

20070826

「分からなさを楽しむ為の映画やで。」

今でもはっきりと覚えているのは、その映画を見入るに従って混乱してゆく自分の頭の中の姿。

5年前に見たデヴィット・リンチ監督の「マルホランド・ドライブ」を見たときの衝撃は時が経っても薄れることはありませんでした。物語の世界に引き込まれた途端、ぼくはひとりぼっち投げ出され、眼の前で繰り広げられる錯綜する映像にただ呆然とするだけで、そのままエンドロールまで終わってしまい映画館を出たのを覚えています。

頭の中が混乱したまま、さっそくこの映画を薦めてくれた妻に電話で「何なんこの映画。なんとなく良かったけど、ストーリーに付いて行けなかったわ・・・」と話すと勝ち誇ったかのように「ストーリーなんてあってないようなもんや。分からなさを楽しむ為の映画やで!」という答えが返ってきて、ぼくは「ああナルホドそういう世界があっても良いんや。」と変に納得してしまいました。

今回5年ぶりにデヴィット・リンチの新作が公開されるということで、劇場に出掛けました。

「インランド・エンパイア」という作品。
期待通り、脳が痺れるような5年ぶりの感覚。

ぼくたち観客はスクリーンの中の世界にやさしく迎え入れられたけれど、そこから物語は入り組んで行き絡み合い、緊張は緩むことはなく目を離すことさえはばかられ、やがて映画の深い底まで意識は沈み込んで行きました。

なんだかそんな感じ。

映像の断片の数々とその深い色合いは映画の印象として深く頭に残りました。やはり物語は分からなかったし、万人に受ける映画でもないと思うけれど、このような作品が身近で見ることができるのは、豊穣な世界があるからだと思います。

世界は分からないことばかりで、時には答えを求めるのではなく、分からなさを楽しむ余裕を持って日々過ごして行きたいと思います。

20070819

妻と娘と一緒に休日を過ごしました。
ふたりが福岡へ里帰りしていたり、ぼくが体調を崩していたりしたこともあって、家族でノンビリする日は久しぶりのことでした。

お決まりのこの暑さ。ぼくたちは川遊びに出掛けることにしました。

自宅から車で北へ向かうこと10分あまり。六甲山のふもとの旧道沿いには森があって小川が流れています。
木陰の下、真っ黒に日焼けした子供達が水着姿で小魚や沢がにを採ったり(多くのお父さんたちも目を輝かせて一緒に遊んでいました。)川原でバーベキューをしたり、犬に水浴びをさせたり。ここは都市の中とは別世界の空気が流れている場所でした。

川に入るとぼくも妻も娘も大はしゃぎ。
ゴツゴツした川底は裸足では少し歩きにくいけれど、川の水は8月とは思えないほど冷たく、日ごろの暑さを忘れさせてくれます。
娘のお気に入りの遊びは自然のすべり台。
高さ1メートルほどの岩の斜面を滑り降りて川に飛び込むというものでした。最初はぼくたちの手を借りて恐々と滑り降りてまた岩の上に登っていたのだけど、だんだん1人で岩によじ登って、歓声まで上げながら飛び込めるようになって、我が子ながら、そのたくましさに驚かされました。

青空の下でのこの楽しい川遊びの時間は、結局娘が足の甲を切ってしまい(幸い本人も気づかないくらいの、小さな傷でした。)おひらきになってしまいました。

家に帰ってまずは小さな傷の手当て。

考えてみれば、こうして傷口に貼るバンドエイドの数だけ子供は大きくなって行くのだと思います。
とぼけた娘の寝顔を見ながら、ぼくも枕をならべて昼寝をする休日の夕方。

こういう日はビールが特別おいしい。

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20070816

しばらく前から四国に来ています。

妻と子供が里帰りをしてひとりになったぼくは、ふと思い立って車に乗って、その先は気分任せ。

山の中にわけ入って緑の中、深呼吸をしたり、大きな川のほとりに立ってゆっくり足をひたしてみたり、太平洋を眺めながらマル一日何もせず過ごしたり。

長い間忘れていたゆったりとした時間の過ごし方です。日を追うごとに頭と体が透き通って行くのが分かります。

このかけがえのない旅は明日には終わってしまうんだけど、今この瞬間過ごしている、この旅の記憶はぼくの心の中でずっとずっと忘れないものになるでしょう。

20070810

先日、胃腸をこてんぱんにやられてから、ぼくは内臓たちの機嫌を伺いながらのビクビクした食生活が続く。揚げ物やカレーなどの辛いのもだめ。ただ、ビールは隠れて少しは飲む。あまり冷えてないやつだけど・・・。

少し調子に乗って、氷入りのフレッシュジュースを飲んだものなら、すぐにお腹の反乱が始まって、やがて眩暈さえ覚えるありさま。

こんな時はホットミルクにかぎる。洒落たカフェで「ホットミルクありますか?」と聞いてみるのは少し勇気がいるし、店内に漂う挽きたてのコーヒーの香ばしい香りの誘惑を絶つのも、大きな決意が必要になる。(ああ、やっぱりカフェラテにしても大丈夫なんちゃうかな!?なんて注文してからずっと考えてしまいます。そら、まわり360度コーヒーの香りなんで、そう思ってしまいます。)

だけど、眼の前にホットミルクが運ばれてきて、少し甘い優しい香りを嗅いだ瞬間、そんな迷いは吹っ切れて「やっぱりホットミルクで正解やん!!」と、自分の選択の正しさに拍手を送りたくなる。

熱く、少し甘く柔らかく真っ白なミルクは口の中でもお腹の中でもとっても優しく、疲れた体が潤って行く気がする。今まで「子供が風邪を引いた時に飲む物」くらいにしか考えていなかったけど、これはまったく素晴らしい飲み物です。

これからも、どうぞよろしく、ホットミルクさん!!